コラム「紙と生活」

このコラムでは毎回、日頃の生活で目にする紙の印刷物について取り上げます。
その紙が私たちのライフスタイルの中でどのような存在なのか、
また今後どのようになっていくのかをトレンドやデータを元に様々な視点で考察するコラムです。

普段手紙は書かなくても、年賀状は送るという方は少なくないと思います。この手紙文化はとても古く、時代ごとに見てみるとその当時の生活までも垣間見ることができます。今回は日本人にとって一番身近な存在の手紙「年賀状」の今と昔、そしてこれからどのような存在になるのかを考察してみます。

過去・現代…その時代を映し出す鏡・年賀状

年賀状のはじまりは平安時代?

一年の始まりを告げる年賀状。日本人のお正月にはなくてはならない存在です。ではこの年賀状を送るという習慣はいつごろから始まったのでしょうか? 大化の改新(645年)以降、伝令書を届ける制度が整えられたことから考えると、7世紀後半に年賀状のやりとりがあったのでは…と推測されます。ただ残念なことに、いつ・誰によって年賀状が始まったのか、歴史的な文献は残っていません。

しかし平安時代後期、藤原明衡による『雲集消息』には、年始のあいさつ文例などが書かれてあることから、貴族階級では年賀状のやりとりがあったようです。その後、飛脚制度の整った江戸時代には、一般庶民の間にも年賀状が浸透しました。しかしながら『梅雨の季節に年賀状の返事がきた』という句もあるほど。江戸時代の年賀状はのんびりとしたものだったのでしょう。 明治時代になりイギリスを手本とした郵便制度が確立。それまでは封書で送っていた年賀のあいさつ状ですが、郵便ハガキの登場によって、「ハガキによる年賀状」が定着しました。

第一回のお年玉くじ・特等賞品はミシン!

さて、年賀状の楽しみの一つは何と言ってもお年玉つき年賀状の抽選でしょう。このお年玉くじが始まったのは1949年。それまではふつうの官製はがきを年賀状として使っていました。ちなみに第一回の賞品は、

特賞・ミシン
1等・純毛洋服地
2等・学童用グローブ
3等・学童用こうもり傘

―――当時は既製服が高価な時代で、洋服を作ることがステータスであったり、ベビーブーム到来など、その時代を反映した賞品のラインナップは実に興味深いですね。 いずれにしても年賀状とくじをコラボさせる発想は、世界にも類をみない斬新さだったとか。そのかいあってか年賀ハガキは順調に増加していきました。 ところが景気低迷やインターネット普及によるメールの浸透によって、年賀ハガキは1997年の37億通をピークに、停滞・減少傾向をたどります。ここで年賀ハガキの発行枚数をみてみましょう。

年賀ハガキ発行枚数推移(小数第二位四捨五入)
過去・現代…、その時代を映し出す鏡・年賀状

2005年には大幅に減少しているのがお分かりでしょう。これは同年施行の「個人情報の保護に関する法律」により、個人情報(氏名・住所等)の共有が制限されたことにも原因があるようです。同法により、名簿作成には本人の承諾が必要になりました。このため学校・企業等では、住所などを記載した名簿の作成がとても難しくなったのです。こう考えると、くじの賞品同様、発行枚数の推移もその時代を映し出していますね。

年賀状はハガキ?それともメール?

さてメールが普及した当初は、ペーパーレスに配慮して「メールで年賀状を」と言われ、Googleなどのグリーティングカードサービスも登場しました。しかし近年では、SNSを介して、相手の住所が分からなくても郵便で年賀状を送ることが可能になりました。 ではどうしてメールではなく、あえて年賀ハガキを送るのでしょう? そこには紙の温かみがあるからでしょうか。

ある調査では、1200人中8割以上が「メールよりハガキの年賀状が嬉しい」と回答。日常がデジタル化する中で、配達され郵便受けに届く…そんなアナログ感が、温かさや嬉しさを倍増させるのかもしれません。さらに手書きで一筆添えられる嬉しさがあると感じます。印刷された文字の中に、ほんの一行「お元気ですか?」とあるだけで、その筆跡から温かさが伝わってきませんか?

過去・現代…、その時代を映し出す鏡・年賀状

最近ではそんな年賀ハガキ利用者に向けて、ネット上で送り先の名簿管理までしてくれる“郵便年賀jp”が登場。これは日本郵政のキャンペーンサイトで、無料の作成コンテンツや約1000種類の年賀素材等がダウンロードできる大変便利なサービスです。

ここでハガキ派はメールを否定しているかといえば、決してそうではありません。親しい人にはハガキ、付き合いの浅い人にはメール――と区別して送っているようです。 では年代差はどうでしょう。ある調査によると、7割以上の人が年賀状はハガキ派で、メール派は1割以下。若い世代になるほど手軽さと即時性のあるメールが人気でした。

ハガキ派を詳しく調べてみると、パソコンで作成している人が7割で、手書き派は3割以下。昔はジャガイモのハンコやみかんのあぶり出しなど、年賀状作りの素朴な楽しさがありましたが、現在ではテンプレート等を利用し、自分好みの年賀状を作る人が多いようです。 少数派ながら、店舗主催の年賀状ワークショップに参加する人も。その場で紙に触れる楽しさがあり、スタッフのアドバイスが新しい発想につながるといいます。また、賀詞もデザイン同様、日本語にこだわらず英語や仏語など、自由な傾向にありました。

過去・現代…、その時代を映し出す鏡・年賀状

ひとえに年賀状…といっても選択肢は多種多様。しかし全てに共通して言えることは、干支と賀詞が入っている点です。干支と賀詞…その大枠を押さえ、あとは自由な発想で年賀状を作る傾向が浮かび上がります。その上で今後は、親戚・仕事関係・友人等、別々のデザインで送る人が、増えていくのではないでしょうか。

このように考えていくと、賞品や発行枚数の推移と同様、自由度の高い現代の年賀状は、インターネットの発達した“今”を映し出す鏡のような存在なのかもしれません。 「紙」の年賀状は新年の最初に届く、心のこもった贈り物です。ですから今後も決してなくなることなく、情報化社会の中で温かさを伝えるツールとして存在し続けるのではないでしょうか。

ハグルマ封筒企画広報部編集

参考サイト
逓信総合博物館(ていぱーく) http://www.teipark.jp

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