コラム「紙と生活」

このコラムでは毎回、日頃の生活で目にする紙の印刷物について取り上げます。
その紙が私たちのライフスタイルの中でどのような存在なのか、
また今後どのようになっていくのかをトレンドやデータを元に様々な視点で考察するコラムです。

現在ではほとんど見られなくなったものの、今だファンの多い蔵書票。
前回はその古い歴史を掘り起こしてみました。後編では、近代の蔵書票の進化について、そして蔵書票の楽しみ方について日本書票協会の理事、末廣吉成さんにお話を伺いました。

紙の宝石・蔵書票(後編)

ここからは、すこし絵柄について触れてみたいと思います。
ヨーロッパで蔵書票が生まれてからしばらくは、宗教的な絵柄、特に天使や聖人、紋章などがほとんどでしたが、庶民に蔵書票が広がるのと同時にモチーフも多様化していきます。


本モチーフは蔵書票の定番(図1)

その一つは"書物"。とにかく本の貴重な時代でしたから、一冊でも多くの蔵書を子孫に残したいという夢を抱いていた人も多かったことでしょう。蔵書票のデザインにもそんな想いが込められ、本や書棚のモチーフはよく使われていました。(図1)

私が個人的に気になったのは、フクロウのデザイン。(図2) 叡智を表す鳥ということもあって、蔵書票にはとても多く登場するモチーフです。フクロウが使われた蔵書票だけを専門に収集されている方もいらっしゃるそう。切手で言うと、きのこモチーフのようなものでしょうか。そして、時は流れ19世紀後半から20世紀初頭ごろには、よりバラエティ豊かなデザインが登場してきます。世界的にアートが大きく発展していった時代。蔵書票も同じく、建築物やヌード、動植物まで、個人の好みがそのまま形になっていきました。


賢くなれそうなフクロウの絵柄(図2)

場所がかわり日本では、大正から昭和。版画作家が蔵書票をつくることがちょっとしたブームとなります。竹久夢二やバーナード・リーチも蔵書票をつくったとか。
当時の蔵書票を調べていくと、川上澄生、棟方志功、武井武雄、芹沢_介らの名も見つかりました。このころの勢いが現代に続く蔵書票のデザインの原型をつくったといっても過言ではないでしょう。

そしてその勢いは、作るだけにとどまらず、 蔵書票を集めたいという愛好家を増やすことに繋がります。アオイ書房の創立者であった志茂太郎が、雑誌「書窓」で蔵書票特集を組み、読書好きの間で評判に。それを受けて「日本書票協会」を創立しました。

書票協会は現在でも勢力的に活動されています。書票協会の理事である末廣吉成さんに話を伺いました。

−蔵書票の楽しみ方について教えてください
「集めて楽しむ人と、作って楽しむ人がいます。古書店やインターネット上で販売されているものを集めたり、他の票主と交換しあうことで様々な蔵書票を鑑賞する楽しみがあります」
他のコレクターと蔵書票を交換することが主流のようで、国内外で開催される蔵書票の大会にでたり、手紙やメールでやりとりすることで、少しずつコレクションを増やしていくそうです。


「鳥獣戯画の蛙」佐野隆夫・作


「山に向かう日」栗田政裕・作

−自分で制作する場合はどのような方法があるのでしょうか
「作家に制作依頼をします。出来上がってきた時にいかに自分の希望がそこに表現されているかを発見できることが魅力。自分で木版画で作ることもできます」
日本書票協会では、蔵書票の普及や、票主や作家間の交流をおこなっています。
公式ホームページでは蔵書票作家の紹介をしているので、気になる方がいれば注文してみるのはいかがでしょうか。

リサーチしていると、銅版画やシルクスクリーンなどが最近の主流のようですが、とくに版画にこだわらずにプリンター出力で作っている方も見受けられました。木版画であれば自分でも作れそう。お話を伺って、ぜひ自作の蔵書票にチャレンジしてみたいと思いました。

蔵書票は本への愛情から生まれたもの。本を大切にする気持ちを育むためにも、より多くの読書家に広めていきたいものですね。

ライター 峰典子

参考書籍:
「蔵書票の魅力 本を愛する人のために」桶田直人著
ご協力いただいた団体:
日本書票協会 http://www8.ocn.ne.jp/~exljapan/
東京都渋谷区道玄坂1-15-11 龍昌ビル3F

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