コラム「紙と生活」

このコラムでは毎回、日頃の生活で目にする紙の印刷物について取り上げます。
その紙が私たちのライフスタイルの中でどのような存在なのか、
また今後どのようになっていくのかをトレンドやデータを元に様々な視点で考察するコラムです。

3回に渡って紙幣について紹介しています。後編では、紙幣がなにから出来ているのか、そして、使われなくなった紙幣の行き先について掘り下げていきましょう。

紙幣の原料とリサイクル(後編)

紙幣の歴史について、さらには特殊な印刷技術について学んできましたが、今回は使われている原料についても調べていきましょう。

日本の紙幣は、みつまた(三椏)やマニラ麻を混ぜ、専用の特殊な用紙をつくっています。三椏は日本で古くから和紙の原料として使われてきた植物。ジンチョウゲ科の落葉低木で、皮から繊維をとって和紙にします。マニラ麻とはバショウ科の植物でフィリピンなどの熱帯で栽培されています。約7メートルにも及ぶ背の高さで、バナナの木に似た姿。特徴はなんといっても軽く丈夫なこと。さらに耐水性もあるので、船でつかうロープの原料としても愛されています。


マニラ麻。3〜8ヶ月で収穫ができるため経済的。

他の国の紙幣とも比較してみましょう。アメリカドルに使われているのは、コットン100%のクレインペーパー。老舗ステーショナリーメーカーのクレイン社が手がけており、紙幣だけでなく、株券、証券、パスポートにも使用されています。ニュージーランドやオーストラリアではプラスティックでできた紙幣(もはや"紙"幣ではないですね)が使われているようです。これはポリマー紙幣といい、しわや折り目ができないので自販機ではじかれることもなく、とても使い勝手がよいそう。紙よりもコストがかかりますが、耐久性が良いというメリットがあります。


ポリマー紙幣。オーストラリアが開発した。

どの国も、今後の課題として頭を悩ませているのが、リサイクル問題。日本でも丈夫な原料で作っているとはいえ、紙幣の寿命は数年。切れ目がはいったものや、ぼろぼろのものは銀行の機械でチェックされ、回収交換されます。およそ年間で3億枚の紙幣が廃棄されているといいます。もしすべて1万円だとしたら、なんとその額、30兆相当。とんでもない量が捨てられていることに驚きます。ひと昔前までは一般廃棄物として処分していたものの、リサイクルの可能性をさぐり、さまざまな取り組みがなされています。

まず使えなくなった紙幣は日本銀行に集められ、防犯のため細かく裁断されます。およそ半分が焼却、残る半分が再利用の道へ。ほとんどが住宅用建材やトイレットペーパーなど身近なものに使用されています。

頑丈さが売りのマニラ麻は、一度製紙されると繊維を取り出しにくく、リサイクル面の課題でした。静岡県の紙製品製造会社、横田が開発した技術によると「裁断くずに水を練り込んだ後、ほかの古紙を加えて再生パルプ化することで、こうした課題に対応した。環境負担を考えて、紙幣のインクを抜かずに再生するため、汚れた処理水が発生することもない」といいます。(日本経済新聞2010/10/27号掲載記事より引用)

古紙のリサイクルはコストもかかってしまうというのが現状。しかし、日本の古紙利用率は世界トップクラス。リサイクルに取り組む企業のたゆまぬ努力によるものです。紙幣の活用法が広がりをみて、より多くの古紙がリサイクルされていくことを期待します。

ライター 峰 典子

参照:http://www.jpa.gr.jp/env/recycle/aim/
    http://www.crane.com/about-us/crane-currency

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