コラム「紙と生活」

このコラムでは毎回、日頃の生活で目にする紙の印刷物について取り上げます。
その紙が私たちのライフスタイルの中でどのような存在なのか、
また今後どのようになっていくのかをトレンドやデータを元に様々な視点で考察するコラムです。

日本人であれば誰もが折れるであろう折り鶴。
子どもの遊び道具の定番でもある折り紙は、どのように誕生したのでしょうか。
そこには、意外なエピソードやつながりが隠されていました。全三回に渡って、折り紙の歴史物語をお届けします。

紙を折って形を作る。文字の発明と折り紙の誕生(前編)


order out of chaos / sheila_sund

今、これを読んでいる皆さんの手元には、どんな道具が並んでいるのでしょうか。長い歴史をのぞいてみると、時代や土地に応じた道具が、常に私たち人間を進歩させてきました。人類が文字を発明した時には、さて、これをどうやって記録として残したらいいのだろうかと、様々な方法が試されたのです。丈夫な竹を短冊状にカットし繋いだもの。材料の調達がしやすく、焼けば保存もできる粘土板。骨や絹布も使われたといいます。

そんな試行錯誤の中で、世界中の人々に大きな進歩を与えたのは「紙」の発明に他なりません。植物の繊維を取り出し、薄く固めるという手法により、自由自在に折り曲げることが可能になり、本という形で情報を残しておくことができるようになったからです。言うまでもなく、パソコンがこれだけ普及した現在でも、紙は情報を記録するのに未だ欠かせない存在でしょう。

さて、世界中の民族が記録のために使い続けてきた紙ですが、それを芸術の域にまで高めた日本の文化が何かご存知でしょうか。その芸術とは「折り紙」です。折り紙の歴史はとても古く、明確な起源は明らかではありません。鎌倉時代には、二つ折りにした命令状や訴状のことを「折紙」と呼んでおり、それが江戸時代に刀の鑑定書にも使われはじめたことで、“保証できる”という意味を込めて“折り紙付き”という言葉が生まれたようです。なにか一定のルールにのっとって紙を折ることはここからはじまっており、折り紙の原点とも呼べるかもしれません。


神木に巻かれた紙垂。作り方にはいくつかの流派が存在する。


歌川国芳の自画像。手前の手ぬぐいに折形が巻き付けてあるのが分かる。

それ以外にも、折り紙に近いものとして、神道で使う御幣(ごへい)や紙垂(しで)が挙げられます。御幣とは長い木の棒に白い紙を付けたもので、お祓いの時などに使われるものです。そして、しめ縄の下に垂れ下がっていたり、土俵入りの時に力士が付けているのが紙垂。ギザギザは、悪いことを遠ざけるための雷を表しているのだと言います。

さらに芸術的な折り紙に近い存在なのが、「折形(おりがた)」と呼ばれるものです。私たちが贈り物にラッピングを施すように、室町時代ではすでに贈り物を紙で包む習慣がありました。和紙が手軽に入手できるようになった江戸時代には、ただ包むのではなく、相手の立場や贈る物によって包み方を変えるようになっていきます。この手法を「折形」や「折末(おりすえ)」といい、現在でも結婚式で使われる、のし袋のルーツになりました。(続く)

文 峰典子

参考文献
『ゾクゾク「モノ」の歴史辞典 あそぶ』ゆまに書房
『折り紙は泣いている』小林仲太郎 愛育社
『世界大百科辞典4』笠原邦彦 平凡社

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