コラム「紙と生活」

このコラムでは毎回、日頃の生活で目にする紙の印刷物について取り上げます。
その紙が私たちのライフスタイルの中でどのような存在なのか、
また今後どのようになっていくのかをトレンドやデータを元に様々な視点で考察するコラムです。

神社やお寺に参拝した際、「運だめし」と言って、おみくじを引く方も多いのではないでしょうか。
そして、結果に一喜一憂する方の姿も多く見かけます。
しかし、おみくじで大事なのは実は……、といったことを含めて、今回はおみくじのあれこれをご紹介します。

知っているとご利益がアップするかも?!おみくじの歴史と引き方のポイント

日本全国津々浦々、多くの寺社で引くことのできるおみくじですが、その起源は実はあまりはっきりしていません。「くじを引く」ということ自体は、占いの1つとしてかなり古くからあり、奈良時代に書き上げられた「日本書記」の中に、くじと思われるものを確認することができます。

では、現在のようなおみくじの形になったのは一体いつなのかというと、それは江戸時代のこと。この頃に「みくじ箱の中から、竹串を1本選び、そこに書かれている番号に対応するくじを受け取る」という形式が定着しました。このおみくじが「おみくじの元祖」とも言われる「元三大師百籤(がんざんだいしひゃくせん)」です。
このおみくじは、一般の人々の間でも大変もてはやされたようで、「百本の御殿へ響く御縁日」(元三大師の縁日の日、おみくじを引く百本の竹の音がお寺の本殿にまで響き渡るほど盛況である)という句からも、その人気ぶりが伺い知れます。

さて、今あるおみくじを大きく分けると、3つのタイプに分類することができます。
1つ目は五言四句の漢詩が記されているおみくじで、先ほど述べた「元三大師百籤」がこれに当たります。
このおみくじは、天台宗の天海という僧が広めました。この天海は、平安時代の高僧、元三大師を大変尊敬していたそうです。するとある晩、天海の夢枕に元三大師が現れ、「信州戸隠にあるおみくじを広めるように」というお告げを授けました。さっそく人を戸隠に送って確かめてみたところ、観音くじが見つかり、それが元三大師百籤として広められることになったという逸話が残されています。


このおみくじは、主にお寺で引くことができる

2つ目は和歌が記されているタイプで、主に神社で引くことができます。実は神社も江戸時代まではお寺と同じ「元三大師百籤」を用いていました。
ところが、明治時代に入り、神道と仏教を明確に分ける神仏分離令が発せられたことをきっかけに、「神社独自のおみくじを作ろう」という機運が高まります。そして、日本には昔、「歌占(うたうら)」という神様からのお告げを和歌で授ける占いがあったことを踏まえ、和歌が記されたおみくじが作られるようになり、今現在、多くの神社で取り扱われているのです。


和歌みくじは明治時代以降にできた、比較的新しいおみくじの形

そして3つ目は漢文でも和歌でもない、それ以外のタイプです。代表的なものとして辻占(つじうら)をご紹介します。もともと辻占は、二つの道路が交差する「辻」に立ち、道行く人々の性別や服装、会話などからインスピレーションを得る占いでした。
これが江戸時代、意味深な一言や艶っぽい短文が書かれた紙のくじに形が変わります。すると、この娯楽性の高いくじは、いつしかお菓子の中にも入れられて、楽しまれるようになりました。今でもせんべいや最中のなかにおみくじが入っている辻占菓子が作られていて、一部の地域ではお正月の縁起物として扱われているそうです。


せんべいを割ると、中からおみくじが出てくる辻占せんべい

ではみなさん、おみくじを引くときの手順は、ご存じでしょうか?そして「よし、大吉!」「凶だった……」等々、吉凶の結果のみに注目したりしていませんか?

おみくじは「神様からのメッセージを誰でも手軽に受け取れるようにしたツール」でもあります。なので、一番大切なことは、自分が気にかかっていることに対する神様からのお告げ、つまり和歌や解説を読み込むことです。もちろん、気軽に引いて楽しんでもよいのですが、もし真剣に神様からのアドバイスを受け取ろうと思ったら、次のような手順で引いてみましょう。

@神様に伺いたいことを具体的に決めておく。
Aおみくじを引く前に参拝する。その際、生年月日と質問事項を念じる。
Bおみくじを引くときは雑念を捨てて、無心になる。
C吉凶の結果に注目するのではなく、記されている内容を読み解く。

ちなみに、吉凶の順番は寺社によりさまざまですが、大きくわけて2つのパターンになります。

1)大吉−吉−中吉−小吉−末吉−凶−大凶
2)大吉−中吉−小吉−吉−末吉−凶−大凶

中には「大大吉」や「凶後吉」というおみくじもあるそうですよ。もし気になった場合は、寺社のかたに確認してみましょう。

何か気にかかることができたときや、心に迷いが生じたとき、ためしにおみくじを引いてみて、神様から助言をいただくのもよいかもしれませんね。

文・松本みずほ

参考文献:
『一番大吉!おみくじのフォークロア』大修館書店
『ニッポンのおみくじ』グラフィック社

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