コラム「紙と生活」

このコラムでは毎回、日頃の生活で目にする紙の印刷物について取り上げます。
その紙が私たちのライフスタイルの中でどのような存在なのか、
また今後どのようになっていくのかをトレンドやデータを元に様々な視点で考察するコラムです。

日本ならではの美容アイテム「あぶらとり紙」。女性なら一度は使ったことがあるのではないでしょうか。皮脂を吸着できる紙……不思議ですよね。今回は「あぶらとり紙」の歴史と仕組みに迫ります。

日本ならではの美容アイテム「あぶらとり紙」

「あぶらとり紙」は、薄い紙を肌にあてると皮脂がとれ、化粧をしたままでも肌がサラサラになるとても便利な美容アイテム。
あぶらとり紙というと、京都のお土産に選ばれる方もいらっしゃると思いますが、ではなぜあぶらとり紙といえば京都のイメージが強いのでしょうか。

今から1200年ほど前。平安京の時代より、京文化を彩り続けてきた「金箔」。
実は、あぶらとり紙は元々、仏像や屏風などに用いられる「金箔」を製造する過程でできあがる副産物なのです。

「金箔」は、純金の板を手すき和紙の間に挟み込んで繰り返し打ち込み、1万分の1ミリまでの厚さに作り上げます。この金の板の間に挟み込む和紙が「金箔」作りには重要になるのですが、普通の手すき和紙ではうまくいかないため、「箔打ち紙」と呼ばれる専門の和紙を使います。これがのちにあぶらとり紙となる紙です。

この「箔打ち紙」は、稲藁から採った灰汁に、卵と柿渋を混ぜ、それを和紙に浸して「アク打ち機」と呼ばれる機械で押したり潰したりを繰り返すことで作られます。
金箔を薄く引き伸ばすために使用され、使い終わった「箔打ち紙」は「ふるや紙」と呼ばれ、これが肌に当てると顔の脂が取れるということが口コミで広まり、高級あぶらとり紙として上流社会の女性や京都の舞妓さんたちにも愛用されるようになりました。そのために、京都で有名なんですね。


なぜこの「ふるや紙」は皮脂を吸着できるのでしょうか。
そもそも和紙は、洋紙に比べて繊維が長く、密度が高いため、吸脂力に優れています。
「箔打ち紙」は、金箔を作る際に何度も強く打ちつけられているため、表面には、稲藁の灰汁や柿渋の混合液が細かい穴を持つ皮膜を形成しています。この細かい穴の大きさは、化粧粉の粒子径より小さく皮脂より大きいため、皮脂吸収力が優れているうえに、化粧崩れが起きにくいのです。

あぶらとり紙で余分な皮脂を取ってからメイク直しをすることで、メイクのノリ自体もよくなるそうです。これだけ薄いのに破れにくく、裏面に脂が染みることがないという性質には改めて驚きますね。

あぶらとり紙は、たくさん使いすぎると、肌にとって必要な皮脂まで奪われてしまう恐れがあるので気を付けて使いましょう。適切な使用回数は、1日1〜2回くらいだそうです。
強く押し当てたり、ゴシゴシこすってしまうと肌への負担となります。皮脂を吸い取らせるようなイメージでそっと優しく肌に押し当ててください。

あぶらとり紙は女性が使うもの、というイメージが強いかもしれませんが、今では男性の汗や皮脂もしっかり吸収する男性用の「あぶらとり紙」も発売されています。男性の肌に合わせ、厚めでしっかりとした紙質に仕上げているそうです。


京都にあるあぶらとり紙専門店「象(ぞう)」では、肌に優しい成分をプラスしたものや、季節や肌質によって選べるあぶらとり紙を販売しています。あぶらとり紙は、入れ物自体が和風の可愛らしいデザインパッケージが多いので、選ぶのも楽しいですね。

あぶらとり紙ができるまでの大変手間のかかった過程を知るだけで、大事に扱おうという気持ちが生まれてきませんか。
普段から持ち歩き、男女問わず美的意識アップにつなげていきたいですね。

文・杉山桃子

参考:
画像協力 あぶらとり紙専門店 象 http://www.kyoto-zou.co.jp/index.html
加美屋 http://www.kami-ya.jp/index.html
かなざわカタニ http://www.k-katani.com/

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