コラム「紙と生活」

このコラムでは毎回、日頃の生活で目にする紙の印刷物について取り上げます。
その紙が私たちのライフスタイルの中でどのような存在なのか、
また今後どのようになっていくのかをトレンドやデータを元に様々な視点で考察するコラムです。

より快適に、より使いやすく進化し続けている紙おむつ。
一体どのような背景から生まれたのでしょうか。

子育て、もっと快適に。紙おむつの歴史



Monkey Uses Dog Door / Monkey Mash Button

ここ最近の育児トレンドの一つである、布おむつ。一時は終焉を迎えていたものの、エシカル志向の人たちが先陣となって、手に入りやすくなりました。しかしその一方で、紙おむつの進化も著しく、赤ちゃんの肌に優しく、多様なニーズにあったものが各メーカーから販売されています。おむつの語源は「襁褓(むつき)」という言葉。「強く包む」や「暖かく包む」という意味を持ちます。おむつが登場したのは江戸時代、大正時代には全国的に定着しました。当時のおむつは古い浴衣をバラバラにして拵えたものが主で、浴衣が手元にない人は、白い晒で拵えたようです。

大正13年。婦人雑誌『主婦之友』に、初めて“ワーキングママ”に関する連載記事が掲載されました。タイトルは「初めて赤坊を持った若き母の為に」。そこには「近頃は一般に三角おしめの方が便利だといふので、少しハイカラなお母さん方は大抵これを用ひておられるやうです」と書かれています。三角おしめはこの頃に欧米で流行していた形で、三角形の布をピンで留めるという布おむつでした。

最初に紙おむつをつくったのはスウェーデン。1940年代半ば、ドイツによる経済封鎖で苦しんでいた政府が、紙を原料におむつを作るよう指示を出したことがきっかけです。その仕様は、ティッシュペーパーを重ね、メリヤス編みの袋をかぶせた簡易的なもので、上から布で覆って使う必要がありました。しかし、布と比較すると格段に楽で、洗濯も不要。母親たちから大きく注目を集めました。1950年代にはそれと似た形の紙おむつが日本でも販売されていたようです。(画像参照)


1950年ごろ(昭和20年代後半)の広告と思われる

1960年代初頭、「母親の育児の省略化が必要」と、ピジョン社が紙おむつの本格的な製造販売に取り掛かりました。肌に触れる部分は不織布、外側には防水紙を使用したもので、布おむつの内側に使うライナータイプ。魅力的な商品であったことは間違いありませんが、育児への考え方が非常に保守的だった当時の日本。「布おむつを使ってこそ母親。紙おむつでは愛情が不足する」と言われ、普及への道のりは厳しかったようです。

大きく前進したのは、女性労働者が1000万人を超えた1970年代半ば。このころアメリカから新商品「パンパース」が輸入されます。長方形の綿パッドを股の部分で織り込んだ“ターンアップ型”と呼ばれるもので、腰にテープが二箇所ついている、現在とほぼ同形状のデザイン。おむつカバーも不要です。この商品をもとに、日本でもテープ式の紙おむつが1981年に発売されます。

現在手にはいる紙おむつは多層構造。表面と肌に触れる部分は、ポリプロピレン不織布。吸水性と吸汗性が高いので、逆戻りせずいつもサラサラ。そこを通ってきたおしっこは、綿状パルプと高分子吸水材でできた吸収体に送り込まれます。それを外に漏らさないのが、ポリオレフィンフィルム製の防水シート。肉眼では見えないミクロの穴があいているので、湿気だけを外に逃すことができるのです。繊細で複雑に仕上がっていることがよくわかります。

一昨年、国内のメーカーから、オーガニックコットンを一部使用したナチュラル志向の紙おむつが発売されました。布おむつならではの優しさと、紙おむつの手軽さ。それらを併せ持つような新商品が登場する日も近いかもしれません。

文・峰典子

参考資料:
『布おむつで育ててみよう』アズマカナコ著/文芸社
『子育ての社会史』横山浩司著/勁草書房
『身近なモノの履歴書を知る事典』日刊工業新聞社

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