【後編】大人から子どもまで愛されている塗り絵~素材やデザインに触れる~
2025/07/16
前編では、塗り絵の歴史についてご紹介しました。後編となる本記事では、塗り絵に使用されている紙素材やデザインなどに注目していきます。

それでは、紙素材について見ていきましょう。まず塗り絵に適した紙の条件として、「①色が定着しやすいように、表面が凸凹しており厚みもある」「②水彩絵の具を使用する場合は、水に強く重ね塗りできる」「③水や油のにじみを抑える(サイジング処理されている)」などが挙げられます。色鉛筆やクレヨン及びクレパス、水彩絵の具など、塗り絵に使用される道具によって紙素材も異なりますので、その点は気にかけた方が良いかもしれません。そして、一般的にはケント紙や画用紙などが使用されていますが、実は塗り絵にも専用の紙が存在します。専用紙は、きめが細かく柔らかい風合いが特徴です。実用性にも長けており、塗り心地もなめらかで色鉛筆や水彩絵の具での彩色にも適しています。
それでは、紙素材について理解したところで、続いてはデザインにスポットを当ててみましょう。現代にはさまざまな塗り絵が存在しますが、実際にどのようなデザインがあるのかご紹介します。例えば、「ストアフロント(店構え)」に注目したデザイン。街中を歩いていると、思わず足を止めてしまうほど素敵なお店に出合ったことはありませんか?そのような、魅力溢れるストアフロントのお店を集めた塗り絵本も登場しています。
なかでも、2025年4月に株式会社グラフィック社から刊行された塗り絵本(以下画像参照)では、パン屋やカフェ、パブなど著者が魅了された世界中のストアフロント45店を収録。線画のみでも作品として十分素敵ですが、色を付けることにより立体感が出てより美しさが際立ちます。ちなみにこの本には、日本のストアフロントも掲載されています。

画像:『大人の塗り絵ブック 世界の街かどから 素敵なお店のたたずまい』(アーバン・アンナ著/グラフィック社)より
出典:PRTIMES
続いては、古典をテーマにしたもの。2024年の大河ドラマ 『光る君へ』の影響もあり、『源氏物語』が再度注目され本書を題材にした塗り絵も多数出版されています。なかには、登場する「花(植物)」に光を当てるなど、少し異なる角度から物語の魅力に迫る塗り絵本も出ているようです。写真のように花だけでなく平安時代の調度品も描かれており、当時の雰囲気も感じられるのではないでしょうか。ドラマを視聴した方や『源氏物語』を読んだことのある方は、その時の感情を思い出しながら塗り絵を楽しむのも良いかもしれません。

画像:『源氏物語の花ぬりえ』(今井未知 著/株式会社ユーキャン)より
出典:PRTIMES
旅好きの方には、「世界遺産」をテーマにした塗り絵もおすすめです。エジプトのピラミッドや、フランス・パリのエッフェル塔など、地球上に点在する世界遺産をモチーフにした塗り絵は、その地を訪れた気分にしてくれます。いつか訪れたい憧れの世界遺産を選ぶのも良し、訪れた時の記憶を思い出しながら色を付けるのも良し。使う人に合わせて、多様な楽しみ方ができるのも塗り絵の良さだと言えるでしょう。

画像:『旅する塗り絵 華麗なる世界遺産 先人たちが遺した絶景』(MdN編集部 編/株式会社エムディエヌコーポレーション)より
出典:PRTIMES
その他にも、アニメのキャラクターや歴史上の人物、イラストレーターの方が手がけた作品など、種類の幅も広がっています。「塗り絵に挑戦してみよう」と思った方は、好みの塗り絵集や線画を探してみてください。書店では美術関係の場所に置いてあったり、専用コーナーが作られていることもあります。またネットで検索すると、無料でダウンロードできる作品もありますので、試しに1枚挑戦してみるのも良いかもしれません。大人向けの塗り絵は、細かい線画の作品が多く完成するまでに根気が必要です。ですが、一枚の絵と静かに向き合う時間は、心を落ち着かせてくれます。完成した時の達成感も、心を満たしてくれるでしょう。ぜひとも、江戸から続く日本の文化を生活に取り入れてみてください。
文・鶴田有紀
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〈参考文献〉
・【“大人の塗り絵“世界の街かどから第2弾】45店のストアフロントを収録!!『素敵なお店のたたずまい』4月発売|PRTIMES
・ユーキャンより『源氏物語の花ぬりえ』を2024年10月28日から全国書店にて発売!|PRTIMES
・一生に一度は訪れてみたい世界遺産の絶景を「塗り絵」で旅しましょう!『旅する塗り絵 華麗なる世界遺産 先人たちが遺した絶景』発売|PRTIMES