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【前編】活版印刷の技法と歴史~東洋と西洋の流れを辿る~

2026/06/16

  • 活版印刷

インキをつけた活字や凸版を、紙に押して印刷する「活版印刷」。凹凸感のある手触りやインキのかすれ、独特の質感など、その独自の世界観に惹かれる方も多いのではないでしょうか。一時は衰退の道を辿っていましたが、近年は再び光が当てられ注目もされています。そんな活版印刷について、本記事から3回にわたりお届け。前編である本記事では、技法や歴史についてご紹介します。

【前編】活版印刷の技法と歴史~東洋と西洋の流れを辿る~


活版印刷の歴史をお話しする前に、まずはどのような印刷技術なのかを改めて見ていきましょう。冒頭でも少し触れましたが、活版印刷とは凸状の活字・版にインキをつけ、紙に押し当てて印刷する技術になります。紙に圧力が加わることから、文字に独特な力強さが感じられ、かすれや微かなインキ溜りにより醸し出される風合いが特徴です。かつては、凹凸のない滑らかな印刷が主流でしたが、活版印刷はその独特な凹みが味わい深い印刷表現として愛されています。ちなみに、インキをつけずに凹みのみで表現する「空押し」という技法もあります。

【前編】活版印刷の技法と歴史~東洋と西洋の流れを辿る~

画像:紙に垂直に圧をかけて印刷されるため、独特の凹みが表現される活版印刷

活版印刷がどのような印刷技術であるかを理解したところで、ここからはその歴史を辿っていきます。
そもそも活字を使用した印刷技術は、11世紀半ばに東洋で誕生しました。中国王朝「北宋(ほくそう)」で「膠泥活字(こうでいかつじ)」と呼ばれる、粘土と膠(にかわ:ゼラチン)を混ぜて固めて焼いた活字が発明されたのが始まりです。その後、13世紀末には元(げん)王朝の農学者・王禎(おうてい)が、「木活字(もくかつじ)」と呼ばれる木製の活字を使用し、著書である『農書』を印刷。作中には、木活字の製法や採字、植字、印刷方法などを記しました。一方の金属製の活字はというと、13世紀初期に朝鮮半島の王朝「高麗(こうらい)」にて開発された銅活字が最古だそうです。また高麗では、現存する世界最古の金属活字本『直指』が印刷されたことでも知られています。

東洋で印刷技術が急成長を遂げるなか、西洋では15世紀半ば(1445年)に、ヨハネス・グーテンベルク(以下、グーテンベルク)によって活版印刷技術が開発されました。使用する金属活字の材料には、鋳造(※)しやすい鉛と錫(すず)、アンチモンを混ぜた合金を選んだそうです。この活版印刷技術の登場を機に、それまで主流であった手書き文字から活字へと移り変わっていきます。また1455年には、活版印刷技術を用いた聖書『グーテンベルク聖書』が出版され、活版印刷が優れた印刷技術だと広く知られるようになっていきました。
(※)鋳造:金属を熱で溶かし、型に流し込んで器物を作ること

その後グーテンベルクは、当時使用されていたブドウやオリーブの絞り機を応用し、ネジ方式で上から押圧する仕組みの印刷機を開発します。ちなみに、これが平圧式の凸版印刷の原型になったと言われています。当時の機械は木製で、18世紀末になると鉄製に変わりました。このほかにもグーテンベルクは、安定した鋳造技術や印刷に適したインキなども開発し、印刷業の経済的確立を後押ししました。

19世紀半ばになると産業革命やテクノロジーの発展により多様な手動印刷機が誕生します。さらに20世紀には、オフセット印刷が登場し活版印刷に陰りが見え始めますが、「感光性樹脂版」という、光を当てると硬化する特殊な素材を用いた印刷版の登場によりその危機を乗り越えました。そして1990年代、オフセット印刷が主流となるなかで、活版印刷にしか出せない風合いや良さが再び注目を集めます。なかには、スタジオを創設し活版印刷の製品を作り出すアーティストや企業も出てきました。この出来事も活版印刷の復活の追い風となり、世界へ広めるきっかけとなりました。

【前編】活版印刷の技法と歴史~東洋と西洋の流れを辿る~


今回は、活版印刷の技術面や東洋と西洋の歴史についてご紹介しました。さて中編となる次回は、活版印刷が日本にどのような流れで伝わったのか、その歴史を追っていきます。

文・鶴田有紀

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〈参考文献〉
・『世界の活版印刷グラフィック・コレクション』(シャーロット・リバース著/グラフィック社)
・『活版印刷の本 凹凸感と活字を楽しむかわいい活版印刷デザイン帖』(手紙社/グラフィック社)
・第3話:世界で初めてつくられた金属製の朝鮮活字|一般社団法人 日本印刷産業連合会
https://www.jfpi.or.jp/printpia/topics_detail21/id=3524
・第4話:グーテンベルクが発明した活版印刷術|一般社団法人 日本印刷産業連合会
https://www.jfpi.or.jp/printpia/topics_detail21/id=3561
・世界最古の金属活字本「直指」、フランスで一般公開|東亜日報
https://www.donga.com/jp/article/all/20230412/4082875/1

 

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